日本酒といえば新潟県の専売特許だった時代はとうの昔。
今は新潟県以外の酒蔵が努力と工夫を重ねて、すっかり新潟のお株を奪った。そう思っているのは私だけではないはずだ。その中の一社が、山口県の「旭酒造株式会社」。
代表取締役の桜井博志さんは、社長である父親の急逝で急遽、酒蔵の三代目を継ぐことになった。日本酒市場の縮小に先駆けて、業績が悪化していくなか、「もし自分が自殺すれば…」と死亡保険金を借金返済のあてにしてしまうほど追いつめられたと言う。
随分前に桜井社長の「逆境経営」という著書を読んだが、つぶれかけた酒蔵を立て直し、「獺祭(だっさい)」を開発して世界約20ヶ国に展開するに至った。日本全国の酒蔵が市場縮小のあおりを受ける中、なぜ旭酒造は活路を見いだせたのだろうか? いろいろな要因が考えられるだろうが、とどのつまりは「心」だったりする。
「今どき根性論かい!」と言われそうだが、経営は思っている以上に科学的かつスマートではない。これが真実だ。修羅場をくぐったことのある経営者なら、このくらいのことは体でわかっているはずだ。会社をやめるのは簡単だ。しかし、会社に関わる人のことを考えるとそう簡単に諦めるわけにはいかない。
実際、倒産の危機を乗り越えた経営者がことのほか多くいる。
数十年も経営をやっていれば、幾度も修羅場はあるはずだ。それはお金も問題だけでなく、人、仕入先など多岐に渡る。
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