とかく私たちは、有形資産を評価しがちだ。
しかし、元々私たちは有形資産など、身体以外に所有していない。土地も、建物も、お金も、すべて後天的に獲得したものだ。ところが最近、無形資産に対する価値が高まっている。そこで今日は、無形資産についてわかりやすく解説する。
無形資産という言葉を聞いて、あなたはどう思われただろうか? 無形資産は目には見えないから、そんなものは評価のしようがないと思った人も多いだろう。評価できないということは、信用がないと言うことだ。つまり、実態がないというだけで、そこに金銭的な価値がつきにくいということだ。
しかし、よく考えてほしい。そもそも私たちは、無形資産を使って有形資産を生み出している。たとえば、アーチストは自分たちの感性や能力を使って、アイデアや刺激的な発想を生み出し、それを絵画、小説、音楽などにアウトプットする。私たちは、アウトプットしたモノとしての有形資産にお金を払っている。
小説や音楽に関しては、作者にどんなに才能があろうと、どんなに経歴がすごかろうと、本の価格も、デジタル音楽の価格も、ほぼ横一線の価格で提供されている。ただし、絵画をはじめとする芸術作品だけは、作家の能力や才能、アウトプットとしての作品の良し悪しで大きく価格が変わる。その理由は、世界に1品しかないからだ。
残念ながら、小説も音楽も大量生産が可能であるから、同じような価格になってしまう。ある意味これは、資本主義社会の恩恵だ。
さて、無形資産のおもしろは、定価がないということだ。
たとえば、「私のスキルと能力、そして経験を買ってください」と自分自身の無形資産を売り込めば、ある人は1,000万円だと値付けをし、ある人は1億円だと値付けをする。ところが、有形資産である土地や建物などであれば、誰が査定してもおおよそ同じような金額になる。一桁違うなんてことは起こりにくい。
クラウドファンディングは、有形資産にお金を払う側面もあるが、その有形資産を生み出すためのミッションやビジョンなどの無形資産にお金を払う側面もある。非常にバランス取れた売買だ。
このように私たちは、自分の無形資産や組織の無形資産にあまりにも無頓着で生きてきたことがわかると思う。誰しもが無形資産を持ってはいるが、それを世間に伝える努力をしていない人が多過ぎるのだ。これからの社会は、有形資産から無形資産に目を向けることが重要になる。今までの日本社会は、あまりにも無形資産をないがしろにしてきたというのが現実だ。だから、笑い話のようなことが起こる。
今から30年ほど前のことになるが、ある金融機関で「創業資金」なる融資のパンフレットを見た。当時、私は会社員だったが、いずれ独立しようと思っていたので、創業資金の融資についてこの金融機関に問い合わせをした。
どのような思いで、どのような事業をやり、社会をどう変えていくのかというような「志」などまったく聞かれるわけもなく、「まず2~3年、自力でやってみて、上手くいったら銀行に相談しにきてください」という素っ気ない回答だった。これのどこが創業資金の融資なのか理解に苦しんだ。このようなことがまかり通っていたのが、当時の日本社会である。
ベンチャー企業に関するセミナーもそうだった。
妻が、「これから創業するのですが、受講は可能ですか?」と問い合わせたところ、「現在勤めていて、企業内ベンチャーとして立ち上げるなら受講可能だ」と、簡単に断られた。とにかく、名前だけはハードルが低いが、いざ本気になると条件が高い。これはすべて、無形資産をまったく評価していない証拠だ。アメリカと大きく違うところだ。 ●株式会社リンケージM.Iコンサルティングのオフィシャルメルマガの登録はこちら。
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